芝居の下手な役者を指す隠語で、 「大根役者」という言葉がある。
メイクばかりに気合を入れて大根のような真っ白に塗りたくる、とか、
大根→白→素人という連想から、などという話もあるが、
もうひとつ有力なのが、大根では食あたりしないから、との説。
つまり、下手→あたり役がない→大根役者となったそうで。
消化酵素ジアスターゼを含む大根は、胃に優しい食材なのである。

そこで思い出すのが福井の「越前そば」だ。
冷たいそばに鰹節とネギ、そして大根おろしを乗せてダシをかける。
あるいはダシに大根おろしを大量に入れ、そばをつけて食べる。
ま、一般的には「おろしそば」と呼ばれるアレに相違ない。
しかし、福井県北部、その昔「越前国」と呼ばれた地域では、
そばといったら、まずはこの“冷+大根おろし”スタイルらしい。
そのルーツは江戸時代。
この地の藩主が、救荒作物としてそばの栽培を奨励し、
また医者の助言により、醤油を大根おろしでのばしたダシでいただく、
という食べ方を広めていったそうな。
そして昭和22年、この地のおろしそばに一大転機となる事件が起きる。
北陸巡幸で福井に立ち寄られた昭和天皇に、このそばが出された。
とてもお口に合ったのか、昭和天皇はお代わりをされたばかりか、
後日、「あの越前のそば」と懐かしまれるほどであったという。
「越前そば」、これで一気にハクがつき、全国に名前が売れた。

とはいえ、変に勘違いして高級化することもなく、
シンプルかつリーズナブルなスタイルを貫く越前のおろしそば。
美味くてつい何軒もハシゴしちゃいそうだ。