牛の舌の肉、いわゆる「牛タン」を食べるという行為は、
いまや日本人の間にもに浸透したといえよう。
全国どこでも、焼肉店に行けば大抵メニューに「タン塩」があるし、
ちょっと気のきいた洋食店ではタンシチューを出してくれたりする。
かくしてそれほど珍しい食材ではなくなった感のある牛タンだが、
さすがに80軒もの専門店が乱立するほど愛食されている地域は
仙台をおいて他にはなかろうと思われる。

仙台で牛タン料理が食べられるようになったのは戦後のこと。
この街にも進駐軍がやってきた。
主に米国軍人である彼らは牛肉を食べる。
すると、舌(タン)や尾(テール)といった、部位が残り肉として出る。
これらを使って何か商売を・・・と考えたある焼き鳥店の店主が、
牛タンの切り身の塩焼きやテールスープといった調理法を発案した。
しばらくは知る人ぞ知る存在だったが、やがて転勤族や出張族により、
次第に口コミで仙台の牛タン焼きの評判が広まっていく。
そして1990年代、輸入自由化で材料を安く仕入れられるようになり、一気に店舗が増加。
現在の繁栄に至るというわけだ。

仙台味噌で味付けして焼いたものも悪くないが、やはり元祖の塩焼きが一番。
やや厚めに切ったタンからにじみ出す旨みがたまらない。
つけあわせの唐辛子の味噌漬けが、またいいアクセント。
ご飯がすすむ。

仙台の駅ビルでは「牛たん通り」と称して数店が軒を並べる一角があり、
朝8時から牛タン焼きを食べられる。
いい街である。