このように、我が故郷では実を食べるばかりであったのだが、
柿の別の部分を食にうまく利用している地方もある。
代表的なのが奈良県南部の吉野地方から和歌山県にかけての地域で、
サバの押し寿司を、渋柿の葉で包む。
柿の葉寿司・・・関西地方へ行くと駅弁でよく売られているから、
もう皆さんご存知の品だろう。

その昔、紀州の漁師が、熊野灘で獲れた夏サバを塩でしめて、
山を越えて吉野の村々に持ち込んだ。
それがちょうど夏祭りの時期で、人々はこのサバの切り身を酢飯に乗せ、
柿の葉で包んで、ハレの日のご馳走としてふるまうようになった。
柿の葉は身近にあり、緑色が鮮やかで、香りもいい。
また、殺菌作用がある物質を含んでいて保存に適しているという点も、
昔の人は経験的に知っていたに違いない。

吉野のあたりでは大小さまざまなメーカーがその味を競っており、
またスーパーの惣菜コーナーにも並んでいる。
あぁ、王道郷土食だよ、柿の葉寿司。
葉の保存技術が進んで、季節感が薄れたメニューになっちゃったけど。
またメジャーになりすぎたせいもあってか、さすがに現在じゃ
魚も米もほとんど遠方産のものを使わざるをえないようだけど。
ま、美味いんだから、良し。